スイミングコーチに必要な3大スキル(学習障害編)
学習障害を持つ子供がスイミングに通う場合、スイミングコーチには特別なスキルと理解が求められます。今回は、学習障害の子供たちに対応するためにスイミングコーチが必要なスキルのうち3つを取り上げてご紹介します。
①コミュニケーションと理解:
学習障害を抱える子供たちは、言語処理やコミュニケーションの面で課題を抱えていることがあります。
全くコミュニケーションが伝わらないという意味ではありませんし、言葉のキャッチボールができている(ように見える)子供たちも多いです。
ただ、書字障害や読字障害、算数障害が体育に影響が全くないということはあまり考えていません。
スイミング中に文字を書くことはなくても、国語そのものに対する心理的なハードルを抱えていたりする子供で、まじめすぎてコーチに質問ができなかったり、何となく「まじめにやらなければ」という意識が強すぎて、心を開いてもらいづらい場合もあります。
文字のイメージよりも、聴覚障害の子供たちのように、視覚的なイメージで物を考えているように感じることもあります。そのため、学校で習う理科でたとえ話をすると理解がスムーズだったり、そこから言葉への興味を持ってもらい、国語へのブロックを崩していく支援をしている子供もいます。
最近は塾に通う子供も多いので、「皆と同じように文字が読めない」というストレスや焦り、不安を抱えていることも多いと思います。
スイミングコーチは、非言語的なコミュニケーションを通じて指導し、子供たちが理解しやすい方法で伝えることが重要です。また、子供たちとのオープンで信頼関係を築き、彼らの個々のニーズや好みに敏感に反応することが求められます。
②柔軟性と適応力:
学習障害の子供たちには異なる学習スタイルやペースがあるため、スイミングコーチは柔軟で適応力があり、個別のニーズに対応できる能力が求められます。
具体的には、算数障害がある子供に「45秒サークルで2本目、3本目と続けて泳ぐ」というようなルールを理解してもらうのが難しい場合があったとします。
数字が苦手でも、ペースクロックを見て、1本目は60からスタートして、2本目は45からスタートして、3本目は30からスタートして、、、というような、視覚的に「この順番でスタートする」ことが分かれば、スタートしていくことはできます。
できれば、子供たちが安心感を得られるように、自閉症の子供と同じように、なるべく予測可能なスケジュールやルーティンを提供することで、特定の苦手分野を克服していく術が分かるようになる支援が望ましいと考えています。変更が必要な場合も、子供たちの能力や「自分でやってみたい」気持ちを尊重しながら柔軟に対応することが大切です。
③サポートとモチベーション:
学習障害を抱える子供たちは、サポートとモチベーションがより重要です。
自閉症など発達障害の子供と同じく、自己存在感が低い傾向の子供が多いので、スイミングコーチは小さな成功や努力に対して積極的なフィードバックをし、子供たちが自信を持ち、楽しい経験を通じて成長できるようサポートすることが求められます。
目標を明確にし、達成した際にはそれをほめるなどその子が受け入れられる形で表現することで、子供たちの意欲を高めることが可能です。感情や動きと、音声言語がつながり、書字につながるとより良いですね。
私達の生徒の中にも、手指の筋肉や発育は問題なく、視覚(追視や奥行きの感覚など)にも問題がなかったけれど、どうしても書くことが課題だった書字障害の子供は、まじめさもありとても悩んでいました。
はじめはなかなか話してくれなかった子も、スイミングの練習でタイピングをし、少しずつ自信を持ち、自分の趣味のことや学校の話をしてくれるようになり、また作文の宿題ができるようになったなど文字での表現ができるようになった子もいます。
新しい言葉も「知らない、、、」ではなく「どんな意味?」と興味が出てきてくれたりと、良い傾向が続くようになりました。
これらのスキルを備えたスイミングコーチは、学習障害の子供たちが安心してスイミングを楽しむことができるようになります。コミュニケーション、柔軟性、適切なサポートは、学習障害を持つ子供たちが自分の可能性を最大限に引き出し、一生もののスキルを身に着けるのに大事な要素です。